
東京都北区赤羽、駅前から続く飲み屋街の中にある
barber bar Kalimbar(バーバーバーカリンバー)。
カリンバ奏者・製作者として活躍するアーティストBun(ブン)さんと、奥様の智美(さとみ)さんのお店です。
遠方の常連さんもいるという、人を惹きつけてやまないお二人の結婚エピソードを、たっぷりお聞きしました。
ケンタッキーで胃袋をつかまれて
★お二人の出会いは?
Bunさん:
一発目の出会いは、俺が高三、さと(智美さん)が高二の時に、区民プールの監視員のバイトをしてて。
智美さん:
昔はね、日焼けしてればモテるという時代があったんだ(笑)
日焼けサロンがないから天サロ(屋外プール)が主流で。
『そしたら1ヶ月で焼けるし!』みたいな(笑)
Bunさん:
で、出会った時は何にもなく…
俺なんかはチャラチャラ遊び人風だったから、誰も話しかけてくれなかったよ、女の子は(笑)
★付き合い始めたのは?
Bunさん:
で、次に会ったのが、1年後くらいにそのプールの監視員バイトの…
智美さん:
今でいうOB会?みたいなの。
Bunさん:
そう、もうさとも高校卒業してたよね?
その頃、俺の働いてるところが、さとの家の近くで。
智美さん:
その同窓会みたいなののときに喋って。
もう180度、(Bunさんが監視員の頃はイケイケだったのが)落ち込んでたよね。
Bunさん:
その数ヶ月前に車で交通事故を起こして…。
助手席の親友の小指を落としちゃったのよ…それで精神的に落ち込んで。
智美さん:
同じ人間とは思えなくらい落ち込んでて。
背中にこんな大きな鬱血みたいなのがあって、あ、この人は早く死んじゃうかも、とか思った。
Bunさん:
事故の後遺症みたいでね、1年くらい、腰も痛いし体も痛いし、でも入院するほどでもないっていう状態で。まぁ誘われたら気晴らしに飲みにもいけるくらい。
それでOB会にも行ったんだけど。
で、当時の勤め先とさとの家も近かったし、俺のことかわいそうと思ったんだろうね(笑)
その頃、飯が食えてなかったんだよね、お金がなくて(笑)
さとが家に来るときにケンタッキーのボックスを買ってきてくれたんだよね。
智美さん:
大好きだって言ってたから(笑)
★それで胃袋をつかまれたんですね(笑)
Bunさん:
こんなもの食べさせてくれるなら(笑)
その時はまだ付き合ってなくて。そっから付き合うような感じになって。
で、付き合い出したら、もう、さとが自分ん家から洋服からカバンから全部持ってきて。
智美さん:
めんどくさかったんだよね、ちょっと不便なところだったから。
夜バスとかないし、歩いたら(家から)50分くらいかかる~
Bunさん:
いや50分はかからないでしょ(笑)
智美さん:
かかるよ(笑)

マンションの取り壊しが結婚のきっかけに
★結婚のきっかけは?
Bunさん:
そのうちに、さとの親からうちに電話かかってきたりするんだよね(笑)
※厳密には、お隣の貸レコード屋さんの電話にかかってきたそうです。
1階がBunさんが勤めていた理容室、2階が貸レコード屋、Bunさんはその2階に下宿していたそう。
Bunさん:
それでお母さんが電話口すごい怖いんだよ、「どこの馬の骨かわからないけど」くらいの。
智美さん:
口が悪いんだよ~下町の女だから(笑)
Bunさん:
だから家に行くの怖いじゃん?
「そこに正座しろ~!」って説教されるかも、とか。
それが行ったらもう、上げ膳据え膳で。それは今でも。
うちの子供達やさとの姉妹たちにはすごい厳しいんだけど、俺にだけすっごく優しくしてくれる。不思議なぐらいね。
で、そこ(Bunさんの下宿)に住むんだったら、うちがやってる小さいマンションがあるから、ここに住みなさい、って。3階に住むことになって。
さとは下に住んでて、ご飯作りに来たり、泊まったり。
そのうちに、そのマンションが区画整理で取り壊されることになって。
智美さん:
再開発かな?都市開発みたいな。全部一回潰して大きな建物建てるって。
Bunさん:
電信柱も無くして地中に埋めて…新しい防災都市みたいのを作るっていう。
で、俺も住んでるから立ち退き料もらえるって。
一人だと30万なんだけど、結婚したら100万円もらえるって。
じゃぁ、結婚しようか、と(笑)
智美さん:
旅行がしたかったから~。
集金しなくては、と…。(笑)
Bunさん:
長い旅をね。
智美さん:
その他にも、そのころバブル時期で、私も会社でほんと席を立てないくらい、机に張り付いて仕事して。朝10時くらいから毎日終電とかやってたから、お金も使わないし、貯金もたまって。
その会社、辞めるしか休むことができないって感じで。
「お盆休めなかったらから秋になったら休めるんだよね?」って思ってるのが、秋になるとシューっと…(みんなが諦めモードに(笑))。
で、貯まってたお金と、結婚資金と、あと結婚お祝い金だ!親戚全員からの(笑)
それを持って旅に出る計画を立てたんだよね(笑)
「旅に出られる!もらえるもの・持っていけるものは全部持っていく!」って思ったよね。
Bunさん:
それ(再開発)がきっかけだよね、結婚の。
さとが21で、俺が22の時(1988年)。もう31年前だね。
★赤坂の日枝神社で式をあげられたお二人。
雅楽の生演奏が入ることが、決め手だったそう
旅と新婚生活
★新婚生活について
Bunさん:
そこから旅に出て、家が取り壊されて…
帰ってきたら、「家がない!!」と。
日本に帰るまで全然気づかなかったんだけど(笑)
(一同爆笑)
Bunさん:
それで、川口にいる僕の親友、交通事故で小指落としちゃった人ね、
彼が、「うちの2階、3部屋あって俺一つしか使わないから、ここに住んだらいいよ」って言ってくれて。
で、しばらくはそこで俺の友達と、俺とさとと、3人で暮らして。
智美さん:
そこでも3人で遊びながら暮らしてたよね。
Bunさん:
友達が隣にいるっていいよね(笑)
智美さん:
カレーたくさん作ったから一杯飲もう!とか
あそこのお寿司屋さん美味しかったから行こう!とか。
そのうちなぜかお寿司屋さんも友達になって、
「今日はもう、このネタ全部食べていいよ」とか。
お金はないけど豊かな生活(笑)。
Bunさん:
で、そこ(川口)を拠点に、またアフリカとかあちこち行って。
★日本に腰を据えて。
Bunさん:
その(川口にいる)間に、さとの実家のマンションが代替え地に新しく建って。
それが今の家。
そこができるっていうときに、妊娠してたのでそろそろ落ち着かないとっていうことで、一室借りて。
智美さん:
うちの父親が死にそうになったら旅行も引き上げちゃったんだよね。
その変わり目で子供を授かった感じ。
それで帰ってきて、出産費用って行政から出るじゃない?
またお金の話なんだけど(笑)
窓口に行ったらさ、そのお金と、プラス、また30万円くらい上乗せになってるの。
「え?私、間違えていただいてないですか?」って聞いたら、
「これは前年度収入のない人はもらえるんです」って(笑)
わらしべ長者続く、みたいな(笑)
※前年度、旅に行っていて収入がなかったため。
Bunさん:
それは初めて聞いた(笑)
智美さん:
びっくりしたぁ~あの時は(笑)
Bunさん:
それが94年かな?だったね。
★世界中あちこちに行かれていますが、今まで行ったところ・滞在したところをざっと教えてください。(順不同)
Bunさん:
タイが延べ2年くらい、インド1年、ネパール半年。
インドネシアのバリ島は一週間くらいかな、これは新婚旅行だったから。
あと、タンザニア、ナイロビ、ケニア…
この辺りまでは二人で。
その後、俺一人では、
オランダ、イギリス、ベルギー、これはピースボートで行ってオランダで降りて、そのまま半年くらい。
オーストラリアとニュージーランド、あとタヒチは5回くらい行ってる(笑)

カリンバとの出会い
★カリンバについて、
Bunさんはもともとカメラマンを目指してたそうですが、カリンバアーティストになった経緯を教えてください。
Bunさん:
インドにいるとき、カメラ持ってブラフマン(お坊さん)を撮りにいってたら、すごい怒られたんだよね、毎日毎日怒られて。
で、あるときカメラは持たずに、カリンバ持って別の所で弾いてたら、いつも怒る怖いブラフマンの帰り道の場所だったみたいで。
そのころはろくに弾けなかったんだけど、ポロポロ弾いてて、パッて顔見たら「お前はそれがいいよ!」って。ニコって笑ってくれて。
「あ、あんな怖いクソジジイがこんな笑顔になっちゃうんだ~カリンバすごいな!」って。
で、次の日にカメラ売って、カリンバの旅にシフトチェンジしたんだ。
★カリンバとの最初の出会い~反原発運動。
Bunさん:
カリンバに出会ったのはね、オアシスっていう、葉山の森戸海岸にいまもある海の家でさとがバイトしてて。土曜日に行って、そのまま泊まって日曜日の夜に帰ってくるっていう。
で、そこに行った時に、ケイタさんって言う人がカリンバを弾いていて。
膝まであるドレッドヘアで、波打ち際でくるくる回りながら。
傘お化けみたいで(笑)あんな長いドレッド見たことない!
民族楽器とのファーストコンタクトだったんだよね。
それまでは俺はU2とか好きで、美容師だったから髪の毛伸ばして縛ってて。
すっげえ人がいるなぁって、恐ろしくて近づけない、だけどすごい綺麗な音がするから。
待つこと1時間くらい、そしたらその人が俺の2つ隣の席に座ったから、勇気絞って話しかけて。
「なんですか?その楽器は」
「カリンバって言うんだよ。ここの店長が作ってるんだよ」
それがGoRoさんで。で、GoRoさんに頼んで作ってもらった。
智美さん:
で、それがBunちゃんが骨折してる時と重なって。
Bunさん:
骨折して仕事いけなかったから。
1ヶ月くらい、GoRoさんのところに行って、カリンバ作ってもらったり。
それがちょうどチェルノブイリが爆発した頃で、原発の本貸してくれて、それから二人して反原発運動やってたり…。
智美さん:
やりだすと盲目だから。ゴリゴリなんだよなぁ。
昔はね、エネルギーあったから。
「俺がチラシ作るからお前は街中に撒け!」とか(笑)
Bunさん:
俺が講習会とか行って勉強して、月1回とか手書きのレポート作って、それをポスティングしたりして。
そしたら不審者扱いされて(笑)。
ちゃんと逃げも隠れもしませんよ、って、レポートに住所と名前書いてたから。
そしたら警察来るよね(笑)
その頃は全部ブレーカー落として、1年くらい電気使わなかった。
なぜかガスも(笑)
夜はランプつけたり。
長い旅に行く前だね。
智美さん:
割と涼しかったしねぇ。再開発で周りが何も建物なかったから。
うちは取り壊し最後の方だったから。
<後編に続く>
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バーバーバー カリンバー
Bunさん・智美さんご夫妻の経営するお店です。
Bunさんのお父様が経営していた床屋(バーバー)を改装して、自家製果実酒や山形・奄美大島の郷土料理を楽しめるお店です。
2階のアートスペースMt,MOONでは、カリンバ作り・ひょうたんライト作りのワークショップや各種ライブを開催しています。
東京都北区赤羽1-20-3
TEL 03-6874-2734
※火・水曜定休日
https://www.kalimbar.com/
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インタビュー 2019年8月19日
撮影・聞き手 ミツハタ フミ
Bunさん・智美さん 結婚のきっかけ
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